業務中の交通事故発生時に行うべき手続きまとめ(人事総務担当者向け)

人事労務関連

業務中に従業員がケガをした場合、人事総務としては知識や経験を生かして適正な処理を間違いなく行わなければいけません。
業務中のケガの発生要件の中で、結構多いのが交通事故です。
以下、労災事故の種別になります。交通事故もなかなか多いことがわかります。

厚生労働省 労働災害発生状況等の分析 から引用

今回は業務中の交通事故に絞って対処法をまとめますので、是非参考にしていただければと思います。
事故被害者の場合のみではなく、加害者の場合にも使える情報ですので、合わせてご確認ください!

交通事故発生時の初期対応

まずは警察に連絡

運転停止し、負傷者がいる場合は救急車の要請等の救護活動を行いましょう。
状況にもよりますが、破損車を移動させ、三角表示板の設置も行うようにしましょう。

★事故当時者同士が怪我なし、損傷なしの場合でも警察は必ず呼びましょう。
通報しなかった場合のリスク
・通報しなかったことに対する処分
・ひき逃げ扱いで処分
・自動車保険が適用できない
・事故処理の長期化

上記のような状況に陥るリスクがありますので、警察への報告は欠かさないようにしましょう。

また、警察での事故処理後、事故相手との間で示談交渉に入る為、被害者加害者に関わらず、以下の情報を押さえるようにしましょう。

★相手方の状況
・住所
・氏名
・年齢
・連絡先
・運転免許証
・車のナンバー・車種

★事故状況と目撃者の確認
・事故原因
・状況
・信号の色
・損傷個所
後からの主張で解決がこじれることがある為、携帯で写真を撮る、ドラレコでの映像を活用し証拠を残しましょう。

※その場でお金・過失割合の話は絶対にしない!
安易に約束すると不利な条件になる場合があります。

病院へ行く

明らかに体へのダメージが無いような軽微な事故を除き、病院へは必ず受診するようにしましょう。
少し車にぶつかっただけと、忙しいからといって受診しないのはNG。そのような事故で、後日、亡くなった方も過去にはおられます。
受診の際は、健康保険証は提示せず、「業務中の災害のため、労災もしくは、自賠責、自動車保険での対応になります。」と病院窓口で伝えるようにしてください。
費用に関しては、窓口で全額立替になる場合や、一部立替になる場合がございますので、病院の指示にしたがってください。(後日書類提出と引き換えに還付もしくは振込されます)

保険会社への事故報告

会社で加入している自動車保険会社への連絡が必要になります。
相手方との示談交渉は、保険会社同士のやり取りになる為、相手の情報をお伝えした後は、基本的にはお任せする形になります。
ただ、ここでの示談交渉に先ほどの
★相手方の状況 と
★事故状況と目撃者の確認
が有効になる為、しっかりと保険会社へ伝えるようにしましょう。
また、レッカー費用の発生、レンタカー費用の発生の有無に関しては、保険の加入状況により異なる為、確認するようにしましょう。
車両修理が必要になる場合は、いつも使用している修理会社などの連絡先も伝える必要がありますので、ご注意ください。

病院受診後の手続き(後日対応)

事故後の病院受診の際に使用可能な保険には数種類ございます。
それぞれに特性がありますので、メリット、デメリットをよく理解し、従業員と会社が損をしないように最適な保険を使用するようにしましょう。
前提として、業務中の交通事故は労災事故に該当しますが、
労災事故=労災保険を必ず使用しなければいけないということはないです。
保険会社は、労災保険を使用してくださいとお願いしてくることが多いので、労災から支給されない費用については、保険会社から支払ってもらうなど、の交渉を行うことも時には必要になります。

★使用可能な保険としては以下の3種類となります。
・自賠責保険
・任意自動車保険
・労災保険

自賠責保険

車両購入時に必ず加入しなければいけない保険となります。
以下、自賠責保険の特徴です。
・人身事故のみに使用可能(物損の場合は使用できない)
・傷害実費(診察料、手術費、入院料、その他関連費用、慰謝料 等)が120万円までしか補償されない
・慰謝料がある(一日4,300円 労災には慰謝料はない)
・後遺障害の場合 限度額4,000万円まで補償
・死亡の場合、上限額3,000万円まで補償
・過失割合が7割を超える場合、過失相殺される(全額保証されない)

自賠責保険を使用する場合、事故受付を行った任意保険会社を窓口として請求手続きが可能となります。
こちらが被害者の場合でも、問題なく手続きを行ってもらうことが可能なので、自賠責を使用する場合はその旨、伝えるようにしましょう。

任意自動車保険

・人身事故身のならず、物損の場合も補償される。また補償の上限金額が無い場合が一般的
・自分のケガや同乗者のケガにも使える(自賠責は相手のケガのみが対象)
・自分の車両の修理費用も補償される

自賠責よりも補償範囲が広く、また上限金額についても無制限なのが一般的なため、広く補償を受けることが可能となります。

労災保険

・療養費(診察代、薬代、入院費、手術費、装具器具購入費、リハビリに関する費用)が補償される
・ケガを負った際の補償の限度額上限がない(自賠責の場合は120万円まで)
・慰謝料の支払いはない
・過失割合に関係なく全額保証される
・年金補償(傷病年金、障害補償、遺族補償、介護補償、葬祭料 など)がある
・特別支給金制度があり、上記の年金と合わせて、一時金の支給とボーナス加算が支給される(休業補償給付の場合は給付基礎日額の20%が追加支給)
・診断書代は支給されない(自賠責、任意保険から支給される)

病院や労基署へ必要な書類まとめ(後日対応)

労災保険を使用した場合には受診した病院への所定の書類提出が必要になりますが、それとは別に休業が発生した際にも労基署へ所定の書類提出が必要になります。

★病院へ提出が必要な書類
■労災指定病院で受診⇒療養の給付請求書(様式5号)を病院へ提出
■労災指定病院外で受診⇒療養の費用請求書(様式7号)を労基署へ提出
■通院していた病院が変更になる場合⇒指定病院等変更届(様式6号)を転院先の病院へ提出
■交通事故被災者の場合⇒第三者行為災害届を労基署へ提出します。
以下、添付書類一覧表です。

東京労働局 第三者行為災害についてより引用

★労基署へ提出が必要な書類
■休業3日以内⇒労働者死傷病報告書(様式24号)を労基署へ提出
■休業4日以上⇒労働者死傷病報告書(様式23号)を労基署へ提出

労災保険と自動車保険(自賠責・任意保険)どちらを使用すればよいか

業務中の交通事故では自動車保険から労災保険への切り替えをすることも可能です。
また、一部併給が可能な補償もございますので、念頭に置き対応するようにしましょう!

労災を使用したほうが良い場合

・ケガによる補償金額が120万円を超える場合
⇒自賠責での補償は120万円までのため(任意保険で対応できる場合は別)

・自分の過失割合が7割以上の場合
⇒自動車保険の場合過失割合に応じて過失相殺されるため全額補償されない可能性があります

・後遺障害により年金が受給できる場合
⇒労災保険の年金は症状によっては一生涯受け取れる可能性があるものです。
自動車保険では一時金の支払いはありますが、生涯補償されるものではないためです。

自動車保険を使用したほうが良い場合

・重傷でなく数回程度の通院や数日の休業で済む場合
⇒これにはいくつか理由がありますが、
休業補償が自賠責の方が多くもらえる
労災の場合の休業補償給付は平均賃金の60%+特別支給金20%が加算された計80%が補償されます
自動車保険の場合、休業損害として給与日額満額が支給されるためです。
※自動車保険から休業損害が支給される場合でも、労災保険から特別支給金20%は併給できますのでご注意ください。

2、通院時に慰謝料(4,300円/日)もらえる
補償額が120万円以下であれば通院時に日額4,300円の慰謝料が支給されるため、上限額の範囲内であれば、労働者にとっては補償がしっかりと受けられます。

車両の修理費用について

自動車事故の場合、車両の修理費用が発生します。
車両の補修費用に関しては、自賠責での対応はできないため、自動車保険の任意保険で対応になります。
過失割合が決定後、相手側の保険会社とこちら側の保険会社で費用負担を決定し対応することになるのが一般的です。
ですので、基本的には保険会社にお任せするという対応で問題はございません。

まとめ

今回は勤務中の交通事故発生時の対応についてまとめさせていただきました。
保険会社への連絡だけではなく、休業が発生した場合は労基署への届け出も必須となります。
あまり事故対応になれることはいいことではないですが、労働者が増えれば増えるほど必然的に事故は多くなってしまいます。
今回の記事で少しでも皆様のお役に立てたら幸いです。

この記事を最後まで読んでくれた皆様が人事総務として飛躍できますように!!!

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